〜Chameleon、Red Baronに学ぶ、ドリアンモードの曲の理解〜
こんにちは、作曲家でベーシストの齊藤庸介です。
もともとnoteで連作していた記事ですが、自分のブログを立ち上げるにあたり、こちらに引っ越すことにしました。ということで、以下は「ベースでアドリブソロ弾けるくん」の(1)の内容になります。
ベースソロの弾き方について納得のいく解説や説明、不安を残さないものがほぼないので、僕が書くことにしました。おそらく、ベーシスト以外の方にもかなり参考になると思います。
ベースでアドリブソロ弾くのは結構たいへん。
なぜならソロの裏でベースがいないから。
低音域でルートが鳴ってないと、メロディを弾いてもハーモニーが生まれないので、聴いててつまらんのです。だから、ベースソロには「フレーズ」を弾くこと、「歌うメロディ」を弾くことがかなり求められます。
聴く側に相当音楽的な耳の持ち主がいれば1音や2音から壮大な背景を想像してくれるかもしれないけど、実際そうもいきません。
だから練習している人や小節の取り方がわかっている人は聴いたらすぐわかります。逆に、適当に弾いてる人やフレーズ知らないんだなって人もすぐわかります。
ゆーてもやっぱりベースソロは難しいです。なので、このブログでは僕が普段レッスンで教えたり、実践していることを少し紹介します。みんながこれを知って、自分の演奏に自信満々でステージでドヤってくれたらめちゃ嬉しいです。
考え方
今回はまず、コードが少ない曲、例えば2つのコードが永遠に続いている曲を題材にします。
ベースに特化してるので、ヘ音記号で書きますね。例えばこんなの。
いわゆる、FM7に向かう「ii-v」がFM7に行かずに永遠づづいてる。1小節に2つコードがあるので、「ショートii – v」って言ったりします。あれです、ジャムセッションでよくやる、ビリー・コブハム先生の「Red Baron」て曲のソロパートのチェンジです。
他にも似てるので、こんなの。
こっちはAbM7に向かうii-vが解決せずにループしてます。「ロングii-v」これは ハービー・ハンコック先生の「Chameleon」のチェンジですね。
こーゆーのを見て、ちょっと勉強しているベーシストの皆さんは、例えばRed Baronのチェンジなら「Gドリアンスケール」と「Cミクソリディアンスケール」使えるな、と、考えます。しかし、実際に演奏すると、このショートii-vが結構早く進行してしまい、スケールでアドリブできない。むずかしー。となるわけです。
その考え方は自分の首を締めている難しい考え方です。しかし、ベースラインを作るときはこの考え方なので、みなさん必然的にそうなっていくのも無理ないのです。これはしょうがない。じゃあどうすんのさ。
はい。
Gドリアンだけ考えていて大丈夫です。
そもそも、セブンスコードは「推進剤」なのです。解決するために、7thコード入れます。トライトーン云々は皆さん知ってるでしょう。でも、こういった解決しないii-vの場合、7thのコードでアベイラブルノートスケールを分けて考えるといわゆるドミナントモーションがないのでジャズなんかで使ってたフレーズが通用しません。
というか、ドリアンスケールも考えないほうが良いです。フレーズをあまり弾く練習をしていない人は、最後にコードトーンに解決する練習もあまり経験してないと思うので、ドリアンの6thの音をめちゃ伸ばしたりして締まりのない適当な演奏をしてしまうかもしれません。
もっと突っ込んだ解説をすると、この曲は「ドレミファソラシド」の音階、いわゆる「メジャースケール」で作っている曲ではなく、「Bbドリアンスケール」で作っています。AbメジャーキーのII-Vを鳴らしているわけではなく、Bbドリアンスケールが曲のキーになっています。そういう曲もあるってこどです。それが「モード」になります。
じゃあどうすんねん。マイナーペンタトニックスケールを使います。もしくはコードトーンを使います。要は、「マイナーフレーズ部分」と考えます。上のRed Baronの方で考えましょう。
で、ペンタだけを考えると、ベーシストのみなさんは経験あるかもしれませんが、スケールを上がったり、下がったりの上下運動になってしまう方がほどんどです。で、本人的にも自覚していて、そこから抜け出せないので、結構苦しい思いをします。昔は僕もそうでしたし。
ここからが重要です。まあフレーズを弾くんですが。フレーズを2種類用意します。
「メインのフレーズ」と、メインのフレーズへ向かうための「出だしのフレーズ」です。僕はこれらを「i (いち)フレーズ」と「v (ご) フレーズ」って呼んでます。なにをもって1、5か。ようは解決部分と、解決へ向かうドミナント部分ということです。
ちょっと待てと。このチェンジはそもそも解決してないって言ったばかりじゃないか。と。
そうです。擬似的に「i (解決)」と「v (ドミナント)」を作ります。フレーズの流れってやつです。
実践
まず i フレーズを用意してみましょう。これは最初のうちは死ぬほど簡単なもので良いです。
Gmペンタです。16部音符が難しそうに感じられますが、これをテンポ70で弾いてください。何回も繰り返し弾いてください。もともとゆっくりのファンクをちょっと遅くしたようなものです。タラララっという具合に。伴奏をmidiで打ち込んで鳴らしながらでもいいし、正直本番は対して伴奏ないようなものなので、メトロノームと二人っきりでやったほうがいいです。
今度はvフレーズを同じくGmペンタで考えます。
もはやペンタというか、2音ですし。そのくらい簡単でいいです。そしたら合体させましょう。
またもテンポ70でしっかり何回も弾きましょう。
こうして、フレーズができました。iフレーズが本当に言いたい言葉。vフレーズはその前説のようなものです。僕はこのvフレーズをいくつかストックしたり、iフレーズをストックしたり、違うものを組み合わせる練習をしたりしています。
フレーズが決まったら、今度は、小節のどの部分に入れるかを決めます。手始めに、ど頭、1小節目にiフレーズを入れましょう。
赤枠がiフレーズを入れたい狙い場所。そしたら、逆算して、vフレーズの場所も決まってきます。
vフレーズの場所も決まりました。オレンジ。この前説部分をアウフタクトと言ったりします。知らない人には通じないこともあるので、vフレーズを広めてください。
結果、こんな感じになりました。
繰り返し記号ついてます。テンポ70で暗記するまで弾きまくりです。
弾きまくると、だんだんつまらなくなってきます。そしたら、vフレーズもしくは、iフレーズをちょっと長くしてみたらどうかと思います。
で、その場で即興でやろうとするといろんな邪念が入り、雑な演奏になるので、しっかり練習しておきます。簡単なほうで。iフレーズの後ろにちょっと尾ひれをつけましょう。
またもたくさん弾いてください。
まだ物足りないですか?じゃあ、尾ひれをもっと伸ばしちゃいましょう。
おわりに
この要領で、vフレーズも伸ばしたり。vフレーズを長くした代わりに、iフレーズを短くしたり。
どうでしょう。ベースソロ。入りはこんな感じで良いかと思います。
普段は、僕が伴奏しながら適宜アドバイスと、課題を追加しながら反復練習をしてみっちり身につけてもらってます。
なぜなら上記のだけでは、まだなんとも拭えない幼稚さが見え隠れしています。エフェクターでごまかせたりもしますけど。もっとナチュラルにソロに昇華させるために、フレーズの装飾。飾り付けですね。を必ず学んでもらってフレーズをゴージャスにする、またシンプルにする、このコントロールをできるようにしてもらいます。
なぜなら、今回は「1小節目」だけ狙っていますが、他にも、2小節目を狙う、3小節目を狙う、2と3を合体させて大きく狙うなど、いろんな小節の捉え方があります。というか、そもそもループ系の音楽は時間軸で演奏しているので、小節っていう概念をあんまり考えないですよね。
上ではわかりやすく4小節のループにしてますが、正直、2小節ループだったり、1小節ループだったりいろんな考え方でやります。
つまり、フレーズの長さをコントロールしてもらいたいのです。
ほかにも、擬似的にドミナントモーションを作るっていうのを元にアウトサイドの音を使ったり、もっとわかりやすくアウトするフレーズの挿入の仕方を勉強したりします。あと、マイナーペンタ以外のスケールを使った、フレーズの作り方とか。モーダルインターチェンジを導入したフレーズの作り方とか。
そんなことより大切な、耳コピからのフレーズの導入の仕方とか。これ大切ですよね。
あとは、もっといろんなコード進行での考え方とか。
ワンコードでテキトーにならない方法とか。
好きなミュージシャンとか、好きなハーモニーによっていろいろやることがあります。結構あります。
そーいったことをレッスンで教えたりしてます。
でもなりより大切なのは、フレーズに説得力が出るまで、繰り返し反復練習をすることです。ほんと、マジで。方法論を勉強して頭でっかちになって、口ばかり達者になっても、実践ではスケールの上下運動をしてるだけってのはかなり恥ずかしいもんです。自分に嘘をついている感じがしますよね。
納得のいくこーゆーことがなかなか売ってる本にも乗ってなくて、まるまる完コピしてるうちになんとなく慣れていったっていう人がほとんどじゃないでしょうか。ぼくもそうです。コピーしちゃあここはなんちゃらスケールだのなんだのメモったり。昔はしてました。
でもだんだんフレーズ主体で考えるようになったりするわけです。耳に残る演奏するために。昔の自分と同じようなことで悩んでる方に打破する情報を共有したいというのがほんとあります。
なによりフレーズで音楽を聴くと単純に他人のソロを楽しめるようになりますし。ベーシストは勉強のためにベースロを聴く、とかそんな縛りは必要ないのです。マイルス(tp)のフレーズかっこえ〜とか、ティグラン・ハマシャン(p)のフレーズの飾り付けかっこい〜とか、ウェス・モンゴメリー(gt)のフレーズ硬派でイカすとか。ロバート・フリップ(gt)の淡々としたミニマルなフレーズ、これベースソロでつかえないかな〜とか。
お、なんか納得いきました!という方がいたら嬉しいです。
個人レッスンもやってますので、CONTACTより気軽にご連絡ください。
僕のホームページはこちら。
P.S.
僕が前にやっていた、Piano Shiftってバンドの曲、Butterflyのベースソロもこの考え方でやってます。こっちはたしかFm7とF#△7だっけかな。で、FメロディックマイナーとかFmペンタとか、トライアドのインバージョン(転回)とか使い分けながらやってます。
Piano Shift