音楽ニュース | Spotifyの支払いルール変更、知っていますか?

こんにちは。作曲家、ベーシストの齊藤庸介です。

Spotifyを使って楽曲を配信しているアーティストや作曲家の皆さん、そして音楽業界の最新ニュースに敏感な音楽ファンの皆さん、注目です。

2024年4月、Spotifyは新たな収益ルールを導入し、年間1,000再生未満の楽曲には報酬を支払わないと発表しました。この大きなルール変更がもたらす影響は、メジャーアーティストからインディーズ、地下アイドルまで広範囲に及びます。あなたの楽曲がどのような影響を受けるのか、そして音楽の未来に何が待っているのかを、以下で紹介する詳細ともに一緒に考えてみましょう。

Spotifyは2024年4月より、年間再生回数が1,000未満の楽曲には報酬を支払わないという新たなルールを導入しました。この変更により、約1億曲がアップロードされているSpotifyのカタログのうち、6,200万曲が報酬の対象外となる見込みです。実際、2022年にはSpotifyでの年間1,000再生未満の楽曲が全体の62.5%に達しており、多くの楽曲がこの影響を受けることになります。

このような厳しい収益条件はYouTubeでも見られます。YouTubeは、チャンネル登録者数が1,000人未満のクリエイターには広告収入を支払わないルールを導入していましたが、昨年6月にはその条件を登録者500人に緩和しました。Spotifyも、将来的には再生回数1,000の条件を見直す可能性があるかもしれません。

Spotifyはまた、フェイク・ストリーム、つまり中身のない再生で収益を得る行為への対策として、内容の薄い「ノイズ・トラック」の削除も開始しました。これにより、削除される楽曲は100万曲単位になると予想されています。こうした対応は、音楽業界における公平性を守るための一環とされています。

Spotifyは、この新しいルールにより「働いているアーティスト(Working Artists)」の収入が今後5年間で10億ドル(約1500億円)以上増えると見込んでいます。ただし、この金額は主にレーベルや著作権団体への支払いであり、アーティストの直接的な収入が増えるわけではありません。

この一連の変更は、「Spotifyの支払いが低い」と不満を漏らす人気アーティストたちの声を受けたものとも言えるでしょう。Spotifyのフリーミアムモデルでは、有料会員のみのApple Musicと比較して1再生あたりの支払いが低いという点が、特に注目されてきました。

また、この動きは、ユニバーサルミュージックが求める「アーティスト中心モデル」へのシフトも反映しています。従来の「楽曲中心モデル」では、単曲の再生数に応じて報酬が決まっていましたが、「アーティスト中心モデル」ではアーティスト単位で収益が計算される仕組みになっています。

この変更に対して、インディーズやDIYアーティストからは「メジャーアーティストを優遇している」といった批判が一部見られますが、大きな反発には至らないかもしれません。YouTubeがルールを緩和したように、Spotifyも音楽の多様性を守るために、今後このルールを見直す可能性は十分に考えられます。

今回のSpotifyのルール改訂により、利益が上がるのは主に会社や団体で活動している作家やA&R担当者です。コンペ等で活動しているメジャー系楽曲の作家は、この新ルールの恩恵を受けるかもしれませんが、地下アイドルやインディーズの楽曲を書いている作家たちには厳しい現実が待ち受けています。特に「配信でリリースします」という契約で楽曲を制作した場合、再生回数が1,000未満なら「印税ゼロ円」で仕事をすることにもなりかねません。編曲料をもらえればまだ救われるかもしれませんが、印税が0円で編曲は別人が担当であれば、もはやそれは「仕事」と言えるのか、疑問です。

さらに、個人で活動しているアーティストたちにとっても、これまで「宣伝になる」として配信を利用していた状況から一変し、再生回数が1,000未満では「聞かれていなければ宣伝にもならない」という厳しい現実に直面することになります。

「無料」に慣れた現代のリスナーたちは、再び「CD」や有料サービスに戻ることができるのでしょうか?音楽のマネタイズはますます難しくなり、結果として残るのは似通った商業的な制作物ばかりになるかもしれません。アートとしての音楽はどこへ向かうのか、これからの行方が心配です。

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